一口で感想を言うなら、「巧い!」に尽きると思います。さすがに、たくさんの賞を受賞しただけの本です。
![]() | Interpreter of Maladies: Stories Jhumpa Lahiri Janet Silver Mariner Books 1999-06-01 売り上げランキング : 3139 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
インド系2世の著者ジュンパ・ラヒリのデビュー作、9編の短編から成る小説集です。主人公はインド系のアメリカ人、あるいはインド人。インドの香りが強くする小説集です。だからと言って人種を前面に押し出すわけではなく、普遍的な人々の日常をさりげなく書いているのです。
特別ドラマチックなストーリーが有るわけでもなければ、面白いストーリーが待っているわけでもありません。ここで描かれているのは、何処にでも転がっている私達の日々の心の動き、そのものなのです。それなのに一つ一つの小説が読み終わった後に、しっとりとした余韻を残してくれるのです。
日々の暮らしの中での小さな心の揺らぎ、哀しみ、喜び、希望、といったものが大げさではない、押さえたリズムで書かれているのですが、とても心に染みてくるのです。淡々と進んでいったありふれた話を、最後の1ページで深い余韻を与えてくれる小説に仕上げる、この著者の、この若さでの、力量に本当に驚いてしまいました。
うまい!
9編の中でも特に心に残ったのが”A Temporary Mater”と”Mrs. Sen's”そして”The Third and Final Continent”です。
”A Temporary Mater”は、子供を死産した為に心がすれ違いだした夫婦が、停電になる1時間の間にお互いの秘密を打ち明け合う、という話。5日間続いた停電の最後の日に、夫が打ち明けた話は・・・
”Mrs. Sen's”離婚した母と二人で暮らすアメリカ人少年が、放課後インド人の家庭で過ごす時間を通して、異国で異文化の中で暮らす人達の心に、思いを巡らす様子が書かれています。
”The Third and Final Continent”はインドからロンドン、そしてアメリカへと移り住んだ主人公が、異国で暮らしながらも一人の老婦人との奇妙な触れあいの中に、次第に尊敬を見いだし、希望を持って生きていく姿に、清々しさを感じました。読後感のとても良い小説でした。
必ずしも全ての小説がハッピーエンドではありませんが、それなのに全編を通して、優しい気持ちにさせてくれる不思議な力を持った本です。
更に、この本の中で出てくるインド料理の香りに、「美味しい物大好き!」人間の私はすっかり魅せられました。小説の中に料理の香りが強く漂っている本は、それだけで私のお気に入りになってしまいます。
非情にきちんとした英語で書かれていて、特殊な慣用句やイディオムは殆ど出てきません。
このところ本を読むたびに、珍しい慣用句は必ずメモするのですが、この本からは一つも見つかりませんでした。インドの特殊な衣装や装飾品、習慣などの単語は馴染みがありませんが、それ以外はきちんとした英語で書かれていて、とても読みやすいと思いました。
一編が20ページ程度の短い話が9編、少しずつ読むのにもピッタリです。
一日一度の、応援クリックを頂けると大変嬉しいです。↓

有り難うございました。
日本語版はこちらです。
![]() | 停電の夜に ジュンパ ラヒリ Jhumpa Lahiri 小川 高義 新潮社 2003-02 売り上げランキング : 13356 Amazonで詳しく見る by G-Tools |


この記事へのコメント
skysong
>押さえたリズムで書かれているのですが、とても心に染みてくるのです。
本当にそうですよね。
私も"A Temporary Matter"と"The Third and Final Continent"が印象的でした。特に後者は泣けてしまって……。
以前、自分のブログで"A Temporary Matter"について、「なんともほろ苦い、けれども、嫌な気分になることなく、人生のほろ苦さを受け入れる『コトン』とした重みを感じさせる短編でした。」と書いたのですが、男性の友人から「ぼくは読んでいて息苦しくて発狂寸前でした。女性はやっぱり強いですね」という感想をもらいました(笑)。男性と女性で受け止め方が大きく分かれる作品なのかもしれません。(大勢に聞かないと分かりませんが)
リウマチばあちゃんさんが次に何を読まれるのか、楽しみにしています。
びっちゃん
リウマチばあちゃんさんは、どうしてそんなに上手にご紹介なさるのですか~!
身の程知らずのレベルですが、ウィッシュリストに入ってしまいました(笑)
どうしよう、まず和書読もうかなぁ(*^_^*)
ちょっと遅いコメントですが、ランタン綺麗ですね♪
広い空の元、とても幻想的で、願いが叶いそうです(*^_^*)
雪とはあまり縁がないのでうっとり見入ってしまいました。
素敵な雪便りを有り難うございました(*^_^*)
michi
わたしもこの本、この作家について、あちこちで読む機会があり、そしてリウマチばあちゃんのブログでも紹介されて、気になり始めています。このエントリーをよんで、手にとる日も遠くないかなと思っています(笑)。読みやすいけれども、深みがあって、安らぎと余韻が得られる本、読んでみたいです・・・
リウマチばあちゃん
そうかもしれませんね。私は女性だから素直に受け止めてしまいましたが、う~ん、男性だったらどうかしら。。。
子供が主人公の2つの小説が、かなり心に残りました。Mr.Pirzadaのバングラディシュに残してきた子供達を思うLiliaちゃんやMrs.Senと一緒に過ごすEliotの視線を通して、異国で暮らす寂しさ、あるいは守らなければならない自分のアィディンティティをすごく上手に書いているなぁと感心しました。
リウマチばあちゃん
>身の程知らずのレベルですが、ウィッシュリストに
読んでみて下さい♪
短い小説ばかりですから、全部読まなくても、読みやすいのだけ読むという手もありますよ。
スノー・ランタンきれいでしょう。
簡単に作れて作るのも楽しいです♪
ロウソクを灯すとすごく幻想的です。
しかし、誰も見に来ないのがたまにキズ(笑)
リウマチばあちゃん
ジュンパ・ラヒリはとても有名な作家なのですね。
でも私はこの本を手に取るまで、全く知りませんでした(汗)
おまけに若くて、すごい美人!
ピューリッツァー賞もなるほど、と頷けます。
殆どの小説が、どうということのない日常を書いているのに、最後の1ページで納得させられてしまうのですよ。「見事!!」と言いたくなる終わり方です。
あまり短編小説は読まない私でも、納得しながら読んでいました。
imagine-peace
さやの
リウマチばあちゃんさん、本を読みながらメモを取っているんですね!すごい…!やろうかなと思ったことはあるのですが、つい読むのに夢中になってしまいます。本ごとにページを変えたりしたら、読書記録みたいにもなっていいですよね。(たぶん…(^^;)。)
1つの短編が手ごろな長さというのもいいですね。インドってどんなところなんだろう??
リウマチばあちゃん
はじめまして。今ブログにおじゃましました。明日ゆっくり読ませていただきます。
リンクの件、こちらこそよろしくお願い致します。
海外の話題がたくさん書かれているようで、私も楽しみに読ませていただきます。
これからもどうぞよろしくお願い致します。
リウマチばあちゃん
お久しぶりで~す。
コメントありがとうございます。
メモを取っているのですが、すぐに忘れてしまうのですよ(苦笑)なかなか単語やイデオムが頭に入らないのです。
この小説、とても良かったですよ。1つが短くて読みやすいのです。もう少しだから読んでしまおう、と一気に読んでしまいました。
是非読んでみて下さい♪
とまる
当分、本は買いませんが、リストに入れておきますね
いつになることやら・・・ですけど、楽しみは多くてもいいですもんね
リウマチばあちゃん
いつか、読んでみて下さい♪
読みたい本のリストがたまっていくのって、幸せですよね。
次はこれ、その次はこれ、なんて考えるだけで楽しくて。
foliposterhus
He doesn't make sense. I don't make sense. Together we make sense.
foliposterhus